『月に夢見る者を人は狂っていると言った』




笑い笑えば君がくる。

ほらいうだろう? 笑うカドには福来る。

だから目にみえないことを嘆くよりはさ。

声あげて笑ってれば、誰か来ないかななんて。

そしてその誰かが君を連れてきてくれたらなって。

ねえ、もういないなんて嘘だよね?

お帰りを言わせてよ。









声が枯れるまで笑っていたら。

君が帰ってきた。冬の匂いをつれて。




── ただいま。──




でも、その時には声がもう出なくて。

笑い泣きの涙しか出ない。声だけが途切れてる。

困ったようにひくひくしてる僕の頬をつついて。





── 笑いダケでも食べたの? ──





浮かんだ微笑に、手をかけたら。

駄目だよってやっぱり微笑んで。

伸ばした僕の手を悴んだ手が止める。

お互いの腕が背中に回される。




「今日はお月見の日だから」

君の手につり下げられた袋の中にあるもの。

「うん、そうだね」

お茶を淹れに身を引き剥がす。

今宵は風流とばかりに洒落こんでみる。




一人笑い続けた狂人の家。門前に、餅突くうさぎ。

来訪に反応してどすっと庭に隠れた石の生き物。

裏玄関から待ち焦がれた君が来た。

さあ、月を見上げて共に食べよう。




銀の月がようやく空から笑いかけた。





── 終わり ──

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毎度の言い訳。 はい、こんなもんでどうしょう? 即席月見小説です。 いや文句はつけんでください。今日が月見の最終日らしいんです。 十三夜の月だけじゃなく十五夜の月も月見なんだとかで。 それと題名からしてあー、というところかもしれませんが。 英語かなんかでで狂った人のことをルナティックというそうです。 ルナ、っていうのはギリシャ語かラテン語で月という意味です。 それとは反対に太陽はソルというのかな。ポケにそんな由来のがいるけど。 でも正常な人は別にソルティックとはいわない。(聞いたことない。 あ、太陽は信仰の対象でもあるし神と例えられる代表だから違うか。 なんかこんなことを普通に喋ってるあたり自分狂ってきたかな、なんて思う。 注釈としては、「狂ったように笑う」「月でうさぎが餅突きをする」そういうものです。 まあ、わからない人は謎のままにしときましょう。(何 月に関連してれば良いってか。 ←自分でいうか。 まあ……良いお月見を、ということで。

2005/10/15 笹木香奈