『彗星の囁き』




ねえ、なんでこの国は。

絶望を教えるのに希望は教えないの?

ねえ、なんでこの国は。

こんなにも殺伐としているの?

ねえ、なんでこの国は。

争ってばかりなの? 世界の傀儡なの?

ねえ、なんでこの国は。

民承や伝奇を狩るの? 幽霊を信じちゃいけないの?

ねえ、なんで──



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



異邦から来た、ねえねえお姉さんはある日舌を抜かれました。

人々の心をかき乱す魔女だと政治家に言われたからです。

問うてはいけない。生きてゆきたいのなら。

けれどお姉さんは生きる道ではなく生かす道を選んでいました。

お姉さんは殺されました。殺した国は世界に負けました。

圧倒的差のある武力でもって挫かれました。それは暴力でした。

でも暴力から敗戦国を立ち上がらせたのはお姉さんのみんなへの問いでした。

顔も忘れさられてしまっていましたが、不思議と言葉だけ残っていたようです。

疑問をあちらこちらでところかまわず振りまいて聞いていたので、

知らず知らず多くの人の耳に入っていたようなのです。

お姉さんは異国から来たおしゃまさんから人を導く星に連なったのでした。

けして英雄に名を連ねることはない、素敵な風化していく人。



── おしまい ──

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あとがき。 何が言いたいんだ私、と思いながらとりあえず思いつくまま書く。 私はこの状態ってもしかして受信とかそんなじゃないだろうなーと疑ってるんですが。 深くも考えないで出した言葉が、後々振り返ると自分にしては上出来なものだったり。 注釈を一つ入れると、「星の輝きは意識しなくても受けているもの、役だっているもの」 ほんとの英雄は事前に大厄災を防ぐもの、という考え方が私は好きです。 これにどこの国がモデルってのはありません。何処の国だって繁栄を望めば独裁者の国になるんだもの。 んー、子供に言ってきかせる童話みたいな詩というか小説というか……ジャンル不明です。 妖怪の町に行って刺激された頭ではこんなものが生まれたのでした。何でだろうね?