がたんごとん、と一定の調子で視界がぶれる
いつ乗ったのだろう──?
この電車はどこへ向かっているのだろう
くしゃりと、僅かに力をこめた手にあったもの
それは赤く切符というには大きな紙だった
「窯地なんて地名……聞いたこともない」
これは夢なのかと首を傾げたら一瞬視界が暗くなって目覚めていた

ひどく曖昧で、それでいて心地よい場所で過ごした
疑いもせず金をとられないホテルに泊まり
疑いもせず小学生のように遊園地でアトラクションに参加した

めいいっぱい走り回って満足した、と息をつくと
電車のホームに立っていた
ピルルル、と笛が鳴り焦った私は電車へ飛び込んだ
そこではっとしたこれはあの夢の続き──?
疑問を声にしたらまた夢は途切れるのだろうか
それがなぜか怖くて口に出来なかった
飛び込み乗車で危うく扉に挟まれそうになる
それでも間に合った、と溜息を吐いて座席に座った
くたりとだれた手には緑色の紙が滑り込んでいる
銀色の字で印刷された行き先と、交通機関の名と

《──有効期限はあなたの眠りから三日。乗車に遅れましたら──》

夢が終わったとき、視界は白に染まりついで母の泣き顔
父が不安を押し隠そうとして出来ていない顔をしていた
妹がベットの端でじっと私の顔を見つめている
白衣の人間が脈拍と意識が快復しましたと呟いて退室した

私は何かに喰われかけたのだろうか

後日、私は赤い画用紙に金色で数文書きそれを細かく千切って捨てた




これも一応、ダーク系になるかと上げてみました。 後々じっくり考えてみるとゾッとする、そんなお話。 部誌に載せてたものをサルベージ。自分でも割と気に入ってるので。 しかし、幼子の不気味さもちょっと出てるかなあ。。 大人はそれぞれが立場によって表情を変えてるのに。 子供は人間臭さを感じないというか。何を考えてんのか想像つかない。 まるで、何もない天上を見つめる猫のような。