十頁 世界の共通物
「いやー、良い天気だな。なあ時雨」
宿の外へ踏み出てあたしが発した最初の一言がそれだった。あー、清々しい気がするぜ。
その後を以下の言葉が続いて発せられる。時雨が全く反応をしめさなかったからだ。
朝日がさんさんと降り注ぐ朝。昨日も似たような天気だったとか思ってんなよ、時雨。
顔に出てんのわかってんだからな。ちったぁ晴れてる日にもありがたみを感じろよ。
旅人にとっちゃ雨が降ってる中の進行は例え霧雨程度のもんでもうんざりするぞ。
修学旅行ん時に雨降ってる中で予定通り行ったテーマパークはきつかったんだからな。
お楽しみのアトラクションがあってもそうだったんだ、ぜんっぜん楽しみなんざねぇ旅ともなるとどうよ?
晴れてもつまらねぇ日々の連続だぜ。地獄になるぞ、どれだけ有名な観光地だろーが。
観光が目的じゃないただ通過するだけでしかない場所なんぞ返って辛いっつーの。
それだけ勢いにのったまま言ったが息切れはしなかった。結構肺活量のある体だからだな。
まあ、この法師姿で現代日本社会の観光地に赴くのもおかし過ぎて衆目集めちまうだろうがな。
でもここらへんには呉服屋が見当たらなかった。なんでねぇんだよ、観光地だからってありえねぇ事態だ。
宿場町だろうが猟師町だろうと何だろうと誰だろーが服屋の一つや二つあるだろ。
宿が集うところを抜けると遊戯区域とでかでか書かれたアーチを見かけた。
もちろん、昨日行った賭博場とはまったく違う外観の場所だ。
向かいあう店の間にある道の幅は狭い。さすがに一般家庭の廊下程の狭さってわけじゃねぇけど。
だけどよぉ……空を見上げてみてあたしは眉をしかめた。この微妙さが、嫌だ。
店の入り口には十数人は雨宿り出来そうな屋根が付けられている。光を取り入れる為に透明な屋根だ。
それが店事に一つ一つ取り付けられている。見てて不経済そうで、それが小市民派としては嫌だった。
所々にある屋根と屋根との隙間を見ると、通りすがりのあたしでも苛々してきそうだ。
個々に同じ材質、同じ色の屋根取り付けるんなら全員で金払ってでかいのとりつけろよ。
具体的に道幅の記述をするのなら横幅たった六メートル弱。広いとは思えない長さだよな。
見れば見る程ケチをつけたくなるからあたしはスタスタと歩いていく。後ろを二足歩行の時雨が追う。
どうやらこの世界の遊び場は朝っぱらからはどこも営業しないらしい。
遊戯区域の、けして短くはない道のりで誰ともすれ違うこともなく人影も見あたらなかった。
そういう事で時雨が二足歩行、ときたま二足で走っていようとも好奇の目はなかった。
にしても長くないか、この一本道。区域っつーんならもっと曲がり道とか交差点とかあるだろ。
横に連なってる店と店との間には隙間があるものの、子供くらいしか通れない狭さだ。
通行者が限定される道なんて曲がり道なんかのうちに数に入るわけがないし第一、見た目よくない。
これは区域というより遊戯通りとか遊戯横丁とかにしたほうが良かったんじゃねえの?
ひねくれた中二のガキに言われちまったらおしまいだぜ。こんな名称つけたの誰だよ。
胸の内でさんざっぱらそう言いながらあたしはひたすら歩く。まだこの服装に慣れてないせいで走りづらい。
あたしが三歩進めば時雨は八歩程進むという具合で遊びの充実した店ばかりが立ち並ぶ風景を過ぎ去っていく。
面白いとも快適とも言えない歩き旅をするしかこの世界では手だてがなかった。
なんで自転車も自動車も電車もバスもないんだ、この世界は。楽が出来ねえじゃんか。妙に進歩してるくせに。
ずっと歩き続けていると町の二つは通り過ぎた。途中、咎めを受けることもなく。
いーのか? 犯罪者の逃亡の片棒かついだ奴なんだろ、この体。
警察とかとは今のところ出くわしてないからかもしれないが……指名手配の紙も見なかった。
しかも町一つ通りすぎる頃には生活水準レベルに差があるように見えた。
朝っぱらにいた町はどこかレトロっぽい看板や雰囲気だった。地面が土だったしな。
だけど今歩いてる町は最新、東京の都心と同じくらいのレベルだ。
どこへ行くのか知らないが線路がちゃんと敷かれていてるし線路沿いに歩けば駅もあるんだろう。
……狭い範囲でこんだけ差がひらいてて良いのか。だって県と県で生活レベルが違うんじゃない。
町ごとに生活水準レベルが違う。時雨や羽根亀と遭遇した場所とは雲泥の差だぜ?
町と町の境界は左端に突き立てられていた青い看板を見るとわかった。その看板を二つ見た気がする。
今日もなんとか宿を取ったが、足に痛みはなかった。旅慣れた体だからか。
この世界は修行僧だかがいるのは普通なのか知らねぇが、法師の格好で町中を歩いていても不審がられなかった。
人の行き交う町中で時雨とはぐれるわけにはいかなかったから葛籠箱の中に入れておいた。
それに。たとえ四足歩行やってようが明かに兎が狐の耳を生やしてるのを見て、怪しまない奴はいないだろう。
昨日泊まった時の宿はペット同伴でも構わなかったが今日の宿もそうだった。
こういう所だけは妙に進歩しているというか……あたしにはありがたいことだが疑問を持たずにはいられなかった。
でも宿は宿クラスのものしかない。ホテルらしき建物はないし、畳ばかりの部屋が基準だ。
明かりは古風に蝋燭が緊急時用に置かれている。照明は電気だが豆電球とドーナツ型電灯。
ああ、ドーナツ食いてぇかも。ドーナツ売ってる店、どっかにねぇもんかな。
まだ旅立って二日しか経っていない。だが二日間、あたしはなんの情報もなくただ歩いているだけだ。
前に進むことくらいしかないことは知っている。倉詩って奴をとっ捕まえて蹴りをいれることが旅の目的だ。
元のあたしの体取り返して一発蹴りぶちこんでやる。あたしの体はあたしのもんだからな。
その為にはこんなことになることの元凶とあたしを元の世界に戻せる力のある奴を探し出すしかねぇ。
元凶のハゲはタコ殴りだ。こいつは許しゃしねえ。
異世界に渡るきっかけを作ったのは倉詩だが、あたしがこうなったのは大半があのハゲのせいだ。
だが、今いる場所や進んでいる方角は知ったところで役に立ちやしなかった。
目指す土地も人もない旅だ。まずはそれを見つけなきゃならない。目指す土地を、探すべき人物を調べなくちゃならない。
目的の場所を見つけることにすら一体どれだけの時間を費やす? 必ずそこに辿りつけるという確証もないのに。
「ちっ……なんだって二十一世紀を生きるはずのあたしがこんなことに」
考え始めるとイライラして来た。あのハゲ、ぜってー倉詩の野郎より先にとっ捕まえて殴る! 首洗って待ってやがれ。
そう何度目かの決意をして、あたしは部屋の電気を消して寝た。
翌朝は喋ることもなく、黙々と歩いていると視界の右端に一軒のドーナツ屋が目に見えた。
店の看板にはでかでかとドーナツの模型が描かれてる。
自然と足がドーナツ屋へ向き速足になる。ドーナツ、見かけたら当然買う!
まさかこの世界に来てまでドーナツが食えるとは思わなかった。
この機会に食べないと今度はいつドーナツ屋を見かけれることになるかわからねぇ。
『ガコッ』
「いらっしゃいませー」
店のドアを開けるとかかってくる店員の声。ショーウィンドウにはドーナツがたくさん並べられている。
なんとなく種類が馴染みの店のと似ているような気もするが、生クリームがあるなら良いか。
「何を買うかお決まりでしたらどうぞ」
にっこりと営業スマイルを浮べた女性店員があたしに声をかけた。そりゃあ、もちろん。
値段もそう高くはないし、これならそう旅に支障はでないだろう。やばくなる前に賭けでまた儲ければ良いしな。
「全種類一個ずつ」
店員はあたしの注文にも営業スマイルで応じた。法師がドーナツ注文しても驚かない世界だった。
まあ、店の外で時雨が前足を壁につけて中を覗き込んでるのを見たときはさすがにちょっと驚いてたけど。
それでも店員はすぐに持ち直して笑ってかわいらしい従者ですね、と言って釣り銭を渡した。
町中を抜けてから出た先は草原。小さい県ならこれで一つ越えたってところか? まあ、どうでも良いけど。
今はそんなことよりもドーナツだドーナツ。適当な岩の上に腰をおろして買ったドーナツの袋を開ける。
いくつかの箱から一つ箱を選び中からドーナツを取り出してほおばった。
「んめぇーーっ」
やっぱ良い。ドーナツ屋の作るものってだけあるよな、いくらでも食える。
あたしが次々と食べていくのを見た時雨は首を傾げたさそうな表情だった。
「おいしいの?」
何あたり前のこと聞いてんだよ。あたしは左手で箱からまだ食ってないドーナツを取り出した。
「お前も食えばわかるぞ。食ってみろ」
時雨はドーナツにかぶりついた。口が開いたときに二本の牙が見えた。口は狐のものらしい。
これってホラーだったら恐ろしいうさぎだな。しかも天然の歯だし。
いちいち動じなくなったあたしもすげぇとこだけど。順応力が高いってことにしとけ。
はぐはぐと食っていた時雨は食い終わると箱の中のドーナツをじーと見つめている。
「食べたきゃ他のも食っていいぞ。あ、でもこれとこれは駄目だかんな」
時雨と同じくらいの数のドーナツをのんびりと昼食代わりに食べた。なんかのびのびした感じの旅だ。
今までなら旅の法師が何食ってんだよってつっこみそうだったけど今度からはよそう。
そう一つ心の中で決めた。食欲には勝てないんだよ、法師だって人間なんだからな。
人間ってのは自分のこととなると緩和するもんだった。
「そこの御仁」
草原を二日歩き続けて新しい町に着いた。土から舗装された道に足を乗せた途端、呼び止められた。
なんだ、一体? 振りかえるとごつい顔の男と優男の2人組がいた。草原に立ってる。
ざっと服装を見ると警察っぽい。どこの世界もこんなもんなのか、警察の服って。
とそんなことを見て思ったあたしの考えが読まれていたのかはともかく、ごつい方の男がずいと近寄る。
いかにも威圧感を与えようとしてんなー。でもそのごつい顔だけでも十分威圧されんじゃねえの?
その顔にサングラスかけりゃすんなりとヤクザの中は潜れそうだ。潜入捜査のほうが向いてそうなおっさん。
ごつい男の隣にいる優男だったら即、袋叩きにされそーだけどな、すぐにばれて。こいつらでこぼこコンビだ。
「倉詩殿、貴殿には我々と御同行願いたいのですが」
「……わかった」
ああ、やわらかーく言って如何にもすぐには捕まえませんよって手か。
そう言われた後を着いてくと牢獄に入れられるんだよな、この展開は。ドラマしかりゲームしかり。
とりあえずどういう罪状が出てるのか見といてやるか。ここで暴れたところでどうにもならねぇだろうし。
この錫杖もまともに振回せないんじゃ戦闘も何もあったもんじゃねえし。時雨に人間と戦えっつーのも無理だろ。
そーいうことであたしは大人しくついていった。勝目も利益もねえ戦闘ができるかっ。
あたしは数日前までただの言葉遣いの悪い女子学生だったんだ、戦闘経験なんざせいぜい喧嘩くらい。
こんなことにさえならなきゃ今頃は中間テストが終った後の息抜きしてたんだよ。
鈴茄とかクラスメイトひっつれてカラオケに行くとかゲーセンで勝ち抜き戦やったりで。
だーもー、そのこと考えると悔しさが募ってくる! テスト明けの楽しみっつたらそれだろ、それしかねぇ!
なんの為に好きでもない勉強を今回は珍しくやったと思ってんだ。小遣い稼ぎと門限引き伸ばしのためだぜ!?
その楽しみを奪った挙句にあたしの人生までもぉー! あのハゲ、絶対一生々涯一瞬たりとも許しゃしねぇ!
あくまでもそれは表情に出さず、あたしは警官2人の後を着いていった。
時雨はずっとあたしの担いでる荷物箱の中に入ってる。今頃になって暴れんじゃねぇぞ。
警官に連れてこられる場所と言ったら警察署、昔なら牢屋のある場所にポイだ。
あたしは警察の部署に入ってごつい親父と優男の後について部署内をよく見た。
別に見学、ってわけでもねえけどよ。一応こういう場所って一度は見ておきたいだろ?
おそらく牢屋への道のりを歩かされている。途中、部署の一つの課の横を通りすぎた。
扉やしきりと言ったものはあまりなく、かろうじて通路と部屋を仕切っているのは低く積まれた段ボール。
つまり、よく見える。プライバシーの尊重ってもんはないんだろうか。この警察署には。
間抜けすぎやしねえか? そう思いつつ遠慮なくあたしは警察官を見た。で、驚いた。
最近の刑務所は誤解されがちだが、本当はかなりまともだぞ。少なくとも日本のは。
アメリカやロシアの刑務所がどうかまでは知らねーけど。でも世界よりも今はここの一課のメンツに驚愕した。
よく見ると一課の名は特殊捜査一課。一課の名前が名前なら待機してるメンツもメンツだ。
この世界の刑務所はどうかっつーと。日本の刑務所とは違って扱い悪そうだ。
この世界の警察署にあたるだろう場所にいるのは、明治時代にいた偉そうな警察官達がたくさん、いた。
明治の警察官ってそりゃーもう悪どかったらしいからな。某明治剣客浪漫譚じゃそうだ。んでもって。
どこが偉そうかってのを言ってみるとしよう。ついでに証明もしとく。人間を見てくれで判断するのも立派な処世術だ。
まず第一に、服装から検分してみるとしよう。さすがに最初っから顔つきで判断するのはよくないからな。
警官が殺人なんてしないってのは常識だがこいつらじゃわかんねぇ。そう思わせる風貌だ。
あたしを町中で見つけたごつい警察官は制服の襟袖をびっちりと整えていて服の皺はまったくついていない。
いかにも国家公務員のいでたちだ。最初顔を見た時は気づかなかったが。
後について歩いているとちゃんとしている人間だ、というのにあたしは気付いた。優男も同じく。
ごつい顔の親父だがしっかりと家庭を持っていそうだし、子供達も案外慕っていそうだ。
優男は優男で嫁さんもらってて子供も儲けてそう。それに比べてこの警察署にいる奴らなんてどうよ?
襟立てまくり、制服すら着てない。頭髪染めてるのはともかく、アフロやリーゼントの奴らまでいる。
あんまりにも警官らしくない。言っちゃ悪ぃが頭の回転が良いとは思えそうになかった。
机があったら机の上に両足のっけて頭の後ろに両腕回してんだろうな。そう思っていたら実際そんな奴もいた。
ついでの話に、あたしが見たのは特殊捜査一課、二課、三課だけだが……その全員悪人ヅラだった。
うちの親父が見たら怒るよりさきに嘆くな。怒ったら怒ったで長げぇんだけど。
うちの親父も長年警官やってるらしいけどよー、ここまで態度の悪い警察官も中々いねえぞ。
そもそも試験、受からないだろ。成績よりもまず先にひっかかるもんあるだろ。
どうやって入ったんだこいつら……もしかして試験とかねえのか、腕っ節で決めるのか!?
ごつい親父と優男がこの部署でもっともまともかつ、唯一現代的らしかった。
他にまとな警官はいないんだろうか。我が身よりもこの部署の行く末が心配になってきた。
ごつい顔のおっちゃん。出迎えがあんただったのが良かったのが半分、悪かったのは半分以上だぜ。
あたしは若干、このおっちゃんに騙されたというような気がしていた。
もしかしたら日本とそう変わりはないかもと思ったんだ。そう思わせるような行動をとる奴だったから。
『ガチャン』
錠の締まる音が広い牢屋の中に響き渡った。
予想どおり、あたしは当然のように投獄された。運の良いことに葛籠箱を押収されることはなかったが。
武器になりそうな錫杖は取りあげられたが。
あのごついおっちゃん、悪い人間じゃない。くどいけど優男もな。
とりあえず、あの二人組がいる日はまともな待遇があるかもしれない。
それにあたしが捕まった理由は倉詩って奴がどんな罪状出されてるのか確認すること。
本人が殺人やらかしたわけじゃねえから、あたしの言いようによっちゃ逃れることができるかもしんねぇ。
判断をするにしてもそれがわからねぇことには立ち回りのしようがないだろうな。
この世界の事情がまったくわからないあたしが目指す場所もないんじゃまったくの無駄だったか。
亀に言われて旅に出たは良かったが、この先どうすりゃ良いんだかな。
この旅は前途多難だ。そのことにようやくあたしは気付いた。
行くあてのない旅を続ける事、情報を求めて見つけるまでの苦労。
そんな事の複雑さも考えずに行動した結果はこうなるのか?
どうやって言い逃れば良い? あたしはこの世界の法律を知らない。
世界は自分にあわせてくれるわけじゃない。偶然の重なりあいは良いことばかりには傾かない。
考えれば考える程に自分の無計画さとこの体の持ち主のしたことに腹が立った。
どうしてあたしも、倉詩って奴も……
いつも感じてる普通のはずの日光が今はやけに熱く感じた。
光を浴びて伸びる鉄格子の影はゆったりとした動きで、あたしの影と重なって通り過ぎる。
……まるで、本当に罪人みてぇ。はは、馬鹿じゃねえの……
まぶたも重くなってきたような気さえしてきて、そんなことはないとわかりつつも閉じてしまった。
何もしてない。あたしは、何も。なのに体が重くて動けそうにない。
なんだよ、これ。なんだってんだよ。
先の事を考えて脱力し、元の世界に戻れなかった時に味わうだろう絶望。
その淵を考えただけでもう。ここは異世界だ、と亀の言うことは心から信じてるわけじゃなかった。
だってさ、そういう割に日本と被るものが多すぎるんだぜ。レトルト食品とかドーナツ屋とか。
でも、何日たっても目を覚まさないもんなのか?
夢は過去の己の記憶から形成されるもの。
その言葉に思考が辿りついて、思い出すのは実羽を庇った時のこと。
あたしは、確かに撃たれたんだ。あいつの拳銃の銃弾に。
血溜まりができそうな勢いで、多分動脈を抉ったんだ。
あの時、眠りにつくことを感じた。
休養の為の一時的な睡眠じゃなくて、二度と覚めることのない眠りへ。
思考の底には、あたしは死んだんだっていう、その答えが待っていた。
これが夢ですらないんなら何だって言うんだよ。
死んだ事を認めたくなかった。誰の為でもない、そんなことってあるかって。
だからあたしはまだ生きてる、ここが異世界であったとしても。
見ず知らずの奴が憎いとかそんな事じゃない。
生きてると信じたいから、元の場所に帰りたいんだ。
これが夢でも異世界でもなんだって良い。死んでさえなきゃ、なりふり構わない。
だけど、今のこの状況に希望を見いだせそうになかった。
寝よう。寝ないで不安な夜を過ごすのは、耐えられそうにない。
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